「熱狂」のありかた — WSO2015年度夏秋ツアー シーズン・プログラムによせて —



木許さんプロフィール
Worldship Orchestraには、創設時から指揮者として関わらせて頂いておりますが、今回より正指揮者というお名前のもとで関わらせて頂くことになりました。どうぞよろしくお願い致します。

さて、記念すべき「処女航海」となった第一回ツアー(2015年冬:マニラ&カンボジア)のシーズン・プログラムは「旅のはじまり」をコンセプトに選曲を致しました。詳しくは前回のコンセプト紹介の文章をご覧頂ければと思いますが、バルトークのルーマニア民族舞曲やボロディンの交響曲第二番などを共通項として、奏者の皆様にはもちろん、聞きに来て下さった方々を「旅」に誘えるようなプログラミングを目指しました。

そして更に、マニラとカンボジアという場所の違いに応じて適宜プログラムを変更しつつ、共演団体であったマニラ交響楽団の十八番であるMga Katutubong Awitinや、カンボジア前国王が作曲されたLa mer à kdatなど、現地曲の演奏および現地ソリストとのコラボレーションを積極的に行いました。忘れ難い瞬間は沢山あるのですが、特にマニラにおける最終日、Rizal Parkで演奏したパイレーツ・オブ・カリビアンメドレーでは、今まで経験したことのないようなエネルギッシュな音が鳴り響いていましたし、カンボジアで「アラピア」を演奏した際の爆発的な盛り上がりや、聴衆と奏者が一体になって音楽の中で遊んだあの時間は、忘れようにも忘れられないほど記憶に残るものとなりました。ご一緒して下さった皆さま、そして様々な形でお力添えを頂いた皆さま、本当にありがとうございました。

第二回となる今回のツアー(2015年夏秋:スリランカ&マニラ&カンボジア)では、「熱狂」をコンセプトとして、シーズン・プログラムを組ませて頂きました。「熱狂」と言っても、そこには色々な形があり得るように思います。たとえば舞踏のリズム、宗教性を帯びた高揚、対位法によって音というテクストを壮麗に織り上げて行くこと、ソリストとの即興的な掛け合い…。生きた時代や用いた手法は様々にせよ、それぞれの作曲家がどのような手段で「高まってゆく」ということにアプローチしたのか、音楽がどのようにして熱を帯びていくのか、こういったことを全ツアーに通底するコンセプトに定めて、それぞれの場所性や演奏会場、共演団体などを考慮に入れた上でプログラミングを致しました。前回と異なって、今回は三地域にツアーが拡大して曲数が多くなっておりますので、ここでそれぞれの演奏曲に触れることは叶いませんが、どのツアーにおいても、そこで人間が演奏しなければ成し得ない熱狂を、魂の篭った音楽を届けることが出来るように全力を尽くしたいと思っています。

「旅で経験するすべてのことがその人を変えていく。その人を作り直して行く。旅の前と旅の後では、その人は同じ人ではありえない。」

立花隆先生の『思索紀行』の中にあるとても力強い一節です。楽器を携えて海を渡るWorldshipの「旅」もまた、皆さまにとってこのような機会となるであろうことを信じて疑いません。

Worldship Orchestra 正指揮者 
木許 裕介


演奏曲目の紹介

2015夏秋ツアーの演奏予定曲目は以下のとおりとなっています。(変更となる可能性があります。)
それぞれのツアーのレパートリーをまとめてYouTubeの再生リストを作成しています。

8月スリランカツアー

◎2つのヴァイオリンのための協奏曲(バッハ)
◎クラリネットキャンディ(アンダーソン)
◎パイレーツオブカリビアン
◎スラブ行進曲(チャイコフスキー)
◎スリランカ曲(選曲中)

スリランカツアーの詳細はこちらから

9月フィリピンツアー

◎エフゲニー・オネーギンより「ポロネーズ」(チャイコフスキー)
◎ジョン・ウィリアムズに捧ぐ(ジョン・ウィリアムズ名曲メドレー)
◎オーケストラストーリーズ となりのトトロより『さんぽ』(久石譲)
◎マニフィカート組曲より第1曲(ラター)
◎歌劇「イーゴリ公」より『ダッタン人の踊り』(ボロディン)
◎Mga Katutubong Awitin(フィリピン曲)

フィリピンツアーの詳細はこちらから

11月カンボジアツアー

◎交響曲第5番「運命」(ベートーヴェン)
◎ピアノ協奏曲第17番(モーツァルト)
◎Arapiya(カンボジア曲)
◎ほか、現在選曲中

カンボジアツアーの詳細はこちらから